妻ちゃんと4歳の姪と夕暮れに歩いていると、前方から5台の自転車が並び車道にはみ出して走行しているのを確認した。
こちらは歩道で妻ちゃんと姪が手を繋ぎ、僕はその後ろを歩いている。このままではぶつかることから、歩行者が一列になって自転車5台とすれ違うことにした。
すると、夏休みだから赤みがかった茶髪に染めたイキっているひとりのヤンキーが僕に極端な首を振りながらガンを飛ばしてきた。
外見が柔らかそうなのでよく舐められる僕は、威圧感を与える首振りのプログラムを組まれた赤べこを想像する。
プログラムされた赤べこヤンキーに興味を持ったことから「どしたん?」と対話を求め、すれ違った分だけこちらから歩み寄った。
相手も止まり距離は縮まる。タバコの煙が確認できる。ガンをつけた茶髪くんは予想外な反応に戸惑いを隠せないようだが「あ、あん?」と好戦的だ。
もう一度「どしたん?」と尋ねる。
すると茶髪くんは4人のお友達ヤンキーに「ヤッちゃう、こいつヤッちゃう?」とひとりでは何もできない調子乗り系ヤンキー特有の同調圧力を行使し、そのうち一人は同意したが他の3人は乗り気ではないよう。
「ヤッちゃうって言葉、場合によっては犯罪だからね」と諭すと、「あん?あん?」と威嚇してくる。僕は女の子が漏らす自身を盛り上げるためのあの声を童貞が再現して自分を慰めているヤンキーくんを想像し、気持ちが悪くなった。
「あのね、そちらが5人、こちらは1人。なんかおかしいって感じないとダメだよ。一応忠告したからね」とトム・クルーズのアウトローのようなセリフがスラスラと出てきてブラフで応戦。
「あーん?」と絶頂に達した偽装の女の子を演じる茶髪くん。それにしても「ヤッちゃう」と発言したのに、まだ自転車にまたがっているのは如何なヤンキーか。
令和の時代にこんなヤンキーがいることに驚きを隠せないが、ひとつ確信した。経験上、弱い系ヤンキーだ。僕が知っている強いヤンキーではない。
ヤッちゃうようなことが起きても、平和的に場を収めることは可能と判断。「まず自転車から降りようか?」とお誘いすると「なんで?なんで?」と降りてくれない。
「僕をヤッちゃうんでしょ?だから降りないと」と再度お誘いすると、茶髪くん同様に他の4人も困惑し始めた。
おどおどとし始めた妻ちゃんが然るべき場所に連絡することを伝える。ヤンキーらが逃げようと画策し始めたそのとき、ハイエースが横付けされた。
「どうしましたか?」と助手席の男性が僕らに声を掛け、降りてくる。
刈り上げて上は金髪だったので東京五輪のご時世から彼を「堂安くん」と名付けた。
「悪そうなやつは大体友達」
強そうな彼がヤンキー側に加担したとしたら。形勢逆転を予感したとき、堂安くんはいう。
「なんか揉めている感じがしたので引き返して来たんですよ」と爽やかに僕に伝え、僕らの右サイドを担当することになった。
5台の自転車ヤンキーに向かって「おまえら、この前会ったよな?また調子乗ってんの?」と彼らの問題と向き合う。
堂安くんは「歩行者に迷惑かけんなよ」と叱責する。そして「他人と向き合った時マスクくらいできんの?」と言うと、マスクをポケットから取り出すヤンキーたち。
「おい、タバコ」と指摘すると、道路に踏みつけるヤンキー。「その吸い殻どうするんか?」と尋ねると拾い上げるヤンキー。
火はしっかり消えていなかったようで、熱かったようだ。吸い殻を落とし、自身の指の具合を確認するヤンキーを僕は見逃さなかった。火が消えたことを確認して拾い上げる。なかった出来事のように振る舞うヤンキーが、なかなかどうしてかわいい。
僕には無理な威圧と諭しだった。やだ、堂安くんかっこいい。
すると4歳幼女の姪は思い出したように大きな声で唱えた。
「お猿さんが自転車に乗っている絵本だ!自転車に乗っているお猿さんだ!」
ひとつ上の姉の正義ガールの血を引いていることから、そうそう物怖じしない姪。後から妻ちゃんから伝えられたことだが「似ている」とぶつぶつとつぶやいていたようだ。
4歳幼女の発言でしゅんとなってしまった茶髪くんら。堂安くんは「お猿さんに似ているの?」と声色を対幼女に変えると、「うん!」と大きく首肯して笑顔で応える姪。
姪の発言は人権の観点から許容されるべきではない。まったく役に立たない大分地方法務局人権擁護課から指摘される前に、僕のほうから茶髪くんらに謝る。
「猿とかいってごめんなさい」と伝えると、先程までの勢いを完全に失い返答に困っているヤンキーたち。
堂安くんは最後に決定的な仕事をする。
「小さい子からおまえらは猿って思われているんだぞ」
堂安くん、それは東京五輪サッカー男子準決勝スペイン戦でとっておいてほしい。姪のゴールでこの試合はもう終わっているのだから。
絞り出すように茶髪くんは「もう行っていいですか?」というので、もう一度僕は「猿って言ってごめんね。でもマナー違反の自転車走行と、外見だけで判断してガン飛ばすのはやめたほうがいいよ」と謝罪と忠告をした。
バツが悪そうに一列で走行するヤンキーたちの背中は夕日に染まっているような気がした。これもインスタ映えと言うのかもしれない。
堂安くんは、ひと仕事を終えた顔をしている。姪のバイバイに爽やかに応えハイエースに乗り込む。運転手の彼は、僕らにおじぎをしたので丁寧に返す。
そのハイエースを見送ると横断歩道の前でブレーキランプが数回点滅した。すると妻ちゃんは「愛しているのサイン」と発し通常に戻っているのを確認。おどおどさせて申し訳ない。
経験上弱い系ヤンキー軍である想定内から引き起こした僕のイキりであるが、「悪そうなやつは大体友達」と堂安くんをそのような目で見ていたことから反省しなければならない。
それにしても4歳の幼女から「理性の刺激」を加えられると、さすがの昭和風令和ヤンキーも耐えられないことは新しい発見だった。
大分のマナー違反は、幼児たちの言葉が効くのかもしれない。
特定野党支持者の護憲派教育者が、税金を使って「私費で行う表現・思想・言論の自由」を侵害できる大分県。
これらの自由は憲法で保障されている基本的人権の根幹です。
公務員を想起する特定野党支持者の護憲派が憲法を知らない絶望的で恥辱的な大分県に、表現・思想・言論の自由は本当に存在しているのか?
だからこそ挑戦したい企画・「oitaが過ぎるでしょうか?」。不定期連載。
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