立て続けにちょっとした摩訶不思議なトラブルに巻き込まれている今夏。
本屋で大人びた中学生のような女子から話し掛けられた。
本屋にて濃厚接触で得た感覚からたぐりよせる情報が弾き出したのは、中学生のようなあどけなさが残る高校生。吹奏楽部のように見えるけれど運動部のような少女だ。
それは夏休み特集の文庫コーナーで起きた。
彼女が陣取るエリアの本が気になり、少女であることから少し距離を起き、彼女がそのエリアから離れるのを待っていた。
ちらちらと数回こちらを見る仕草を確認する。アメリカで生まれていれば高校生のときにCIAからスカウトされ、テロ指導者をシールズと共に確保していたであろう広い視野を持つ僕は素直に読み取る。
その場から離れようとしたとき、勇気を振り絞った声を聞く。
「おすすめの本は、ありますか?」
なぜ中学生や高校生のときにこんなことが起きなかったのだろうか?とあらゆる神様の残虐性について考えを巡らせたが、30手前のお兄さん(おじさん)として紳士に応じることにした。
「あるよ」、と言いたかったけれど敬語で応える。
ノモンハンの夏が目についたのでおすすめしたかったが、思い留まった。
なんせ僕は「ネットには保守が多い」というよくわからない文言で護憲派日教組教育者から憲法が認めたあらゆる自由を税金で侵害された男だ。
「少女に国粋主義の文庫本を薦めてきた」などと、文字は読めるが文章を読めない大分県民が愛読する大分合同新聞ネット版・不審者情報に掲載されるのはごめんだ。
大人びた中学生の高校生らしき少女が読みそうな本を、素直に推薦することにした。
少女が左手に抱えている本をチラ見した。いわゆるホンチラだ。
かがみの孤城上・下、本と鍵の季節とそのなかに金閣寺が入っているのは、なかなか興味深い少女だ。
氷菓を本棚に見つけた。「千反田える」のファンとして世界的な権威である僕は薦めようとしたが、本と鍵の季節があることから野暮だろう。センスなさすぎおじさんだ。
少女の声掛けに裏切るわけにはいかない。
おすすめしたい本として「アウシュビッツの図書館係」や「ザリガニの鳴くところ」を薦めたかったが、文庫コーナーをうろついていた少女である。
お金が足りないはず。
なんなら僕がこの2冊を贈呈として捧げることも頭をよぎったが、「2冊の単行本を上げるから30分くらい待ってて」のおじさんとして、例の不審者情報に乗るわけにはいかない。
「時流系好きですか?」と尋ねると「なんですか?」と聞き返してくる。多様性の物語として「52ヘルツのクジラたち」を例にあげた。
するとなかなか辛辣な感想が返ってきた。お母さんから薦められて読んだけれど、「うーん」とのこと。
なかなか辛辣なうーんだった。
1000文字くらいかけて、多様性を訴える側が税金で人権侵害を加えて何も感じない感性ゼロの大分県に向けて嬉々として少女の純粋な感想を綴りたいが、生徒に言論封殺も辞さない「NIE教育に新聞を」の大分県なので、少女は守らなければならない存在だ。
「村上春樹」はどうだろう。
尋ねてみると「なんか面倒くさそうなおじさんの本ですよね」と言う。
痛烈だ。
そのおじさんに夢中になっている妻ちゃんに向けたピロートークのネタを回収する。
小川洋子さんの僕の中の最高作である「ホテル・アイリス」も、護憲派が税金で表現の自由を侵害できる大分だとしても、少女に薦めるほどの勇気は僕にはない。
頭のなかの回線を繋ぎながら少女を見ると、templeに人差し指を当てているではないか!
頓知野郎・一休さんだ!!
そして目の前にある本は、「なむなむ」の夜は短し歩けよ乙女。
なんという偶然だろうか!だから世界は面白いのだ!!
少女もブラック校則とは無縁のような黒髪の乙女として夏のマッチングをしている。
こちらも時流の「酷い風邪」の物語があるが、彼女のピンと来なかった時流の感性とは相容れないだろう。
大人として、声掛けられお兄さん(おじさん)のプライドとして、ここまでの積み重なった偶然という奇跡を見捨てるわけにはいかない。
エクソシストを目指してバチカンに行こうとしていた時期もある僕は、黒髪ショートヘア乙女の文庫本を指差す。
「愉快なタイトルですね!」と手に取り裏側を文字を読み取る少女。そして黒髪の乙女は、左手の文庫群に収める。
「ありがとうございます」と東京五輪のアイルランド選手団のようなおじぎをして、僕らはその場から離れた。
実際購入したところまでは見ていないが、きっと少女は買ってくれたと信じたい。
別れ際に僕は、夏休みはまだあるから読めよ乙女に対して余計なことを言ってしまった。
「読書感想文を書くときは、カキフライについて書くといいですよ」と告げると、少女は「はて?」という顔をした。
女子の声になる前の感情を読み取る異能を持つ僕からしても、あれは本気の「?」だ。
「村上春樹を模倣したカキフライおじさん」として、例の情報網に乗らないことを祈りたい。
なむなむ。
特定野党支持者の護憲派教育者が、税金を使って「私費で行う表現・思想・言論の自由」を侵害できる大分県。
これらの自由は憲法で保障されている基本的人権の根幹です。
公務員を想起する特定野党支持者の護憲派が憲法を知らない絶望的で恥辱的な大分県に、表現・思想・言論の自由は本当に存在しているのか?
だからこそ挑戦したい企画・「oitaが過ぎるでしょうか?」。不定期連載。
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