僕はシャッターが降りたお店の前を走る。聖地巡礼するアニメオタクの気持ちがわかった。閉業して3ヶ月後、落ち着いたいま常連だからこそ写真がなくても語れることがある芳華(ほうか)の閉業。
なぜ写真を撮らなかったって?インスタ映えを邪悪と認識している意識高い系と僕を混同しないでいただきたい。
写真をとると麺が伸びる。芳華さんへの敬意として僕は写真を撮らない。しかしながら決死の覚悟で写真を撮った者たちのジャーナリズム精神に敬意を払おう。
大分でNo.1の麺を提供する芳華が閉店
ラーメン・やせうま・炭酸水そうめん。
大分には様々な麺がありますが、そのなかでもNo.1になるのが芳華の冷麺・温麺。
私見ですが2番はつくらない。つくらなければ2番にはならない。気にするのは蓮舫議員だけで十分だ。
常連として語っておきたい芳華・三種の神器
空いている席にわざわざ隣に座ってくるリーマン。その瞬間を僕はリーマンショックと呼んでいるほど、人が混んでいるのが嫌いです。
人気店であるからこそ、人混みを避けた立ち回り方を身に着けました。
平日夕方オープン17時から、土日祝日であれば15時過ぎ。この時間帯であれば冷麺が繁盛する夏であっても、お客さんが少ない。
入店してからの立ち居振る舞いを紹介しましょう。
お冷のコップの選定から始まります。オレンジや透明のコップがありますが、常連として語りたいのが銀のコップ。これを銀の聖杯と呼ぶ。
次にれんげの選定。常連として推奨したいのが木のれんげ。
人によっては名前をつけることもあるという割り箸。僕は基本、好きなものを選びます。名前は忘れた。
これらを三種の神器と僕は呼んでいました。
芳華で冷麺を超える温麺を知ってしまった
多くの方々は冷麺を注文しますが、僕の芳華の最適解は温麺。
温麺だからこそ際立つスープ。まずキムチのたれが掛かっていない方から味わう。それはまるで小野伸二のトラップを想起させられる優しいタッチだ。
ちょい辛未満であればお皿でキムチが提供されます。あえてスープを味わうためにそのような注文をすることもあったほどファーストタッチの優しさを感じられるスープ。
夏であっても注文しなかった冷麺に勝るのが温麺。
常連たちはこのことを知り温麺を注文することも多かったが、自分のなかで独り占めしたい気持ちがあったのだろう。だから冷麺の芳華として先行した。
絶品な温麺が広がらなかった理由はここにあると譲りません。
おすすめしたかった温麺の食べ方
先述したようにスープは、まずキムチやたれがかかっていないほうから口に運ぶ。そのための木のれんげである。広くスープをすくうことができることから、その時僕は想像をする。
このなかで溺れるのも悪くないと。
謎の儀式が終わった後はすぐにかき混ぜない。たれが掛かっている麺をすするのも良い。しかしここは注意をしなければなりません。
むせてしまう可能性がある。一時的に気管が殉教するお客さんを何度も目にしてきました。
薬膳の立ち回りはまず黒豆納豆を制す
冷麺にしろ温麺にしろ、トッピングがあります。そのなかでも人気だったのが薬膳。種の類が彩るのですが、そのなかでもメインは黒豆納豆。
温麺ではスープを味わった後に黒豆納豆に取り掛かる。少量のスープを黒豆納豆にかけ、れんげのなかでスープに黒豆納豆を浸し食べる。
これで今まで冷蔵庫で眠っていた黒豆が絶妙な温度バランスになります。
ここで活躍をするのが、他のれんげよりも受け皿が広い木のれんげ。黒豆納豆にうまく温度が伝わり食べやすくなります。これを温冷黒豆食事法と呼ぶ。僕が考えた。
かき混ぜることで黒豆納豆のとろみがスープに伝わるのも良いという人もいます。もちろんこのような食べ方も認めましょう。
芳華の冷麺・温麺を前にすれば人は平等なのだから。
ここで芳華こそこそ話
熊本地震の影響で黒豆納豆の提供が滞ったことから薬膳が限定になったことも。たまに韓国のりが入ることがあり、その時の温麺とのマッチングは至高としか言いようがない。
サイドメニューはおでんと焼豚以外認めない
冷麺・温麺が主要なメニューとなりますが、芳華にもサイドメニューがあります。いろいろとあるのですが、そのなかでもおでんと焼豚は最高峰。
黒い出汁のおでん。好きなのはこんにゃくと糸こんにゃくと牛すじと卵。麺が運ばれてくる前におでんの糸こんにゃくを食べることは、コシが強い麺を想定したテストマッチ。
ここまで備えるのが常連の矜持。
「認めない」なんて強がりましたが、それ以外食べたことがないことを告白しておきましょう。
常連になると戴けるちょっと早いお年玉
芳華さんの年末は早い。12月の中旬までに閉店し、お正月明けまで冬休みを取るのが恒例でした。僕にとってはクリスマス前の大きな行事です。
年末の挨拶を兼ねて来店すると、ちょっと早いお年玉をいただけます。それがキムチにかかるたれ。卵かけごはんにして食べると美味しかったです。
上級常連としての特権。それまでに費やした金額は・・・。
マスメディアへの露出が少なかった
ここまで愛されたお店であることから、閉業となると取材もあったと感じます。
「歴史に幕」とか大分合同新聞が好きじゃん。「おまえの新聞社はエンドロールが始まっていることに気付けよ」なんていうのはやめておこう。
冷麺と温麺の前では相手に敬意を。
多くのマスメディアの取材を断ってきたのも芳華さん。OBSの夜の番組に出演したことがあるお話を聞いたことがあります。
某放送局の方が激辛を食べるのも目撃したことがありますが、ここから取材への道が開かれるように感じます。しかし自身が築き上げてきたコネを使わなかった。
芳華愛を感じる常連として、愛する同志。
常連になるとアットホーム化する
お店の方が無愛想と言われることがありますが、常連となればアットホームになるのも特徴です。人間の交流のように関係を築くまで時間がかかる。
そんなお店がひとつくらいあっていいじゃん!
僕は高校生から通うことによって、店内にお客さんがいない時はアイスやデザートをいただく関係にまでなりました。
たいせつなことは目に見えないんだよ。
芳華の閉業は大分の隠された喪失
喪失との向き合う時間は人それぞれですが、僕にとって大分の終わりと感じた芳華の閉業は3ヶ月経過しなければ語ることが難しかった。
あの温麺にもう出会えない。開業から3ヶ月経過したいま、大分の隠された喪失と感じます。
芳華さんを失ったここ数ヶ月間に数々の麺と浮気をしてきました。手軽に作れて食べられるファミマの冷凍味噌ラーメンをNo1にしたいほど、投げやりな気持ちに苛まれます。
妻ちゃんが作る「あったかふわふわたまごうどん」なんていうクック○ッドのような子供騙しの名称の麺に、No1を与えるのは、芳華を愛する者として看過できない妥協に苦悩しています。
芳華が閉業して3ヶ月経過した後に語れること。
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