セルジオ豊後論

日本人初の10番にキャプテンマークをつけさせた大分トリニータの決意

本当に良い試合だった。ゲームって生き物だと思えた。自分たちから仕掛けるという意志を持つプレッシング。特に前の2枚のチェイシングは気持ちが入っていた。それに連動して動く中盤と、モタモタしていないディフェンスライン。まるでプレミアリーグで快進撃を続けるどこかのクラブのような個々がチームのために犠牲になる気持ちが入ったプレスだった。

それは自分がやるんだという意志の表れでもある。若い前線の2枚は献身的に走り、両サイドは仕掛けようとし、ダニエルは経験を糧に、起点を作らせる前に果敢にラインを崩してまで潰しにかかる。相変わらずシュートは枠には飛ばないけれど、前半のスタッツから見ても長野を圧倒した。自分たちのかたちを作っていけば、枠に飛ぶようになり、ポストを2回も直撃するまで成長できる。90分のなかで成長しているチームを見ているような感覚のゲームで、心から面白かったと言える。

大分トリニータ史上初めての10番を付け、このゲームでキャプテンマークを巻いた松本昌也。前半カウンターからチャンス。左サイドから仕掛けてパスを出せる場面であったが、自らシュートを打ちに行った。「自分がやるんだ」という、このゲームで各選手たちが持っていた意志という面において、代表的であり象徴的なシーンであった。

ゲームキャプテンはチーム事情によって、そうせざるを得ないこともあるだろう。しかしなにも松本昌也でなくても良かったはず。なのに大分トリニータ史上初めての10番にキャプテンマークつけさせた。このゲームに掛けるなんらかの決意が、片野坂監督もしくはフロントにあったのかもしれない。初めての日本人でしかも大分出身の若き10番。こういう部分も大分トリニータは大切にしていってほしいと思う。「大分には大分トリニータがある」を復権させる布石になるはず。

長野の方も昇格を掛けたシーズンになるはずなので、このゲームへの意気込みがあっただろう。引いてきたことで、大分が主導権を握る形になり、正当な評価という点では、このゲームだけで大分トリニータを測ることなんてできない。ただこんなゲームをあと29試合することができれば、結果はついてくることを予感させるゲームをした。ここまで仕上げてくれた片野坂監督に、正当な評価を大分マスメディアは与えてあげてほしい。

評価と言えば、大分マスメディアを含めて、サポーターも正当な評価を選手たちにしてあげてほしい。「細かすぎて伝わりにくいこんなお前のプレー見ているんだぞ」を伝えることも、若い大分トリニータを育てるためには大切なことだ。細分化することでゲームが成り立っていることは誰の目から見ても明らかであり、それは否定できない。ゴールやアシストの数だけで評価するのではなく、ちょっとした気付きにくいプレーに、評価を与えるような大分であってほしい。

大分トリニータ今季のスローガン“原点回帰”から見る新体制の評価

大分トリニータ今シーズンのスローガンが「原点回帰」に決まった。原点回帰から見ると、“大分愛”に執着した新体制であることがわかる。片野坂新監督を初め首脳陣は、大分を知っているメンバーが揃った。榎新社長も、前社長の良かった部分である安定した経営を引き継ぎ、前社長にはなかったサッカークラブで重要な“クラブ強化”を明言してくれた。原点回帰は、大分トリニータを取り戻す意味合いが込められていて、評価したいスローガンである。

個人的には、ようやく地域クラブの意味合いを込める粋なことを、大分トリニータがしてくれたことに嬉しく思う。「日本人選手に10番を、特に大分出身者にこそ10番を」の想いを僕は今まで何度も綴っていたが、これが実現することになった。中津出身の松本が大分トリニータ史上初めて日本人選手が10番をつける。これこそ“大分愛”であり、大分FCの覚悟を見た。一時期地域クラブの星であり、そしてどん底を味わったクラブが息を吹き返す大分トリニータ夢物語の主人公となる選手に育ってほしい。20歳の大分出身者が付ける10番には、そんな願いも込められている。

しかし見方を変えれば、これが限界であることを証明した“原点回帰”となった。“大分愛”を全面的に出せば、このメンバーは必然的に集めることができ、そして10番を大分出身選手に付ければ、“大分愛”は容易かつ簡潔に見せることができる。片野坂新監督は3年連続コーチとしてJリーグ優勝経験をしているが、監督としての手腕は未知数であり、蓋を開けてみなければわからないことも多い。サポーターは長い目で片野坂監督を見守る姿勢も求められる。

ただ大分トリニータの戦術に一番欠けていた守備意識を植え付けるとするならば、最適な監督であると評価もできる。広島、ガンバ大阪と守備が硬く、リズムはディフェンスから作るサッカーを、コーチとして知っている監督であることを忘れてはならない。前監督とは違った守備を冒涜するようなサッカーは見られないと思う。そしてサッカー観が大変乏しく、大分県に新たなサッカー観を与えることができない大分マスメディアも、守備の概念という良い勉強ができる機会となる。

良いスタートを切りたいのであれば、開幕スタートは必至だ。片野坂監督は言う。「ピークを開幕に持っていくのではなく、戦う姿勢を見せる準備をする」。開幕でピッチに立つ選手たちがどんな姿勢でゲームに入るのかを注目してほしい。

大分トリニータ榎新社長への期待とトリガール路線変更案

誰もなりたくないようで、また県から出向されることとなった大分トリニータ新社長だが、ひとつだけ榎新社長にやってほしいことがある。「大分を取り戻す」くらいの発言で期待感を煽ってほしい。榎新社長が仮に大成功を収めた場合、大きな功績となる。また落ちるとこまで落ちたことで、それをしやすい状況でもある。今年J2昇格できなければ、このままズルズルと居座り、そしていずれ・・・というシナリオも十分想定されているので、榎新社長には頑張ってほしい。

大分の兄貴ダイノジの大谷さんはぷらすとで「女性の方が拡散能力が強い(SNSや行動力による)」と説いた。草津では湯もみをJリーグの選手が上半身裸で行うようだ。それにより地元民が選手の素行を知り、それは偶像化されるという。それから見るとトリガールという、カープ女子の二番煎じの方向性は間違っていないことになる。でも話題性はまったくない。

いまJ3に落ちた大分トリニータに必要なものは、新しい大分サポの獲得と“大分愛”の熟成。そしてサッカーを厳しくみることができる目だと思っている。そこでトリガールに変わるガールシリーズ。女性の拡散能力に頼り、大分愛を熟成し、なおかつサッカーを見る目を養う存在。よってトリママなんてどうだろうか?

選手を育てるという母性の目から厳しくも優しく接する“かーちゃん像”。たとえば試合に出ない選手やユースからあがってくる選手が、ゲーム観戦を一緒にしてサッカーを教わることができる“券”。広報さんらの目が届く席であれば、そこまで問題はないだろう。ゲームに出れない選手の威厳に関わる問題で憂慮すべきだが、トリママに愛され、応援されるというメリットもある。

その選手がゲームに出れば、トリママは大喜びだ。我が子がピッチで躍動する。その我が子にサッカーの見方を教わっているので、時に厳しい激が飛ぶ。もちろんそれは叱咤激励だろう。時間があるときは、練習場にも来れる。選手はママたちの目を誤魔化せないから、頑張らなければならない。選手が移籍した時は、トリママをやめちゃうかもしれないね。

「かーちゃんが大分トリニータを強くするけん」なトリママに路線変更したらいいのに、なんて思っている。